三日連続で一日一曲歌詞を書いている。僕にしては珍しいことだ。
「時間をかければ良いものが作れる」というのは素人の思い込みだとつくづく思う。
丁寧に作るのは勿論悪いことじゃないが、丁寧に作ったから作品の質が担保される訳ではもちろんない。
言葉の分量としては小説などより遥かに少ない詩/詞においては尚更だ。
勿論作り手の気持ちを思えば、苦労した作品はその分評価されたいと考えるのは自然なことだが、この世界はドライなのである。
僕らの作品に対する思い入れと、その良し悪しは全くといっていいほど無関係だ。
そして自分の作品に愛着を持ちつつも、客観的な目で自己評価できるかどうかが、プロとアマの境目かもしれない。
歌詞を書くのは電光石火、一触即発、一期一会の勝負なのである。数時間の死闘であって、だらだらと続ける緩慢なジョギングであってはならない。
インスピレーションが着火点になる。その火がつけば数十分で作品は仕上がるが、その火をどうやって点けるか、これは毎回苦労する。
僕の場合はタイトルで固まることが多い。
タイトルが歌詞の重要なフレーズを定め、ディティールを固める。
インスピレーションは至るところにある。過去の経験、映画の一台詞、SNSのタイムライン、誰かがいった一言…。
だけどそれが「作品の原型」であることを発見できるかどうかが創作をする上で決め手になるのではないだろうか。
スティーブン・キングは曇りガラスにケチャップが付着するのを見て、出世作『キャリー』を思いついたという。
あの冒頭の、ロッカールームでの初潮のシーンから、超能力少女を巡る大カタルシスに至るまでをそのヴィジュアルで一気に着想したのだと。
なんとなくわかる気がする。
ちょっとしたインスピレーションが浮かべば「あとは書くだけ」の状態になる瞬間。
僕はといえば先日ようやくそれを掴めたので、最近はただただ書いている。
知ってしまった世界の秘密を、こっそり打ち明けるかのように。